「エンジニアリング組織の基礎知識」を聴いてメモしたこと、感じたこと

11/26-29 の4日間にわたって開催された Internet Week 2019 にて、11/26(火)午前中のセッション「エンジニアリング組織の基礎理論と実践」を拝聴してきました。
登壇者の一人 なりみちさん(@nari_ex, 株式会社ハートビーツ VPoE 高村成道さん)の発表内容は、今後自分が学んだり仕事をするうえで何度も読み返す導になるだろうと考え、手元のメモと感想を記しておきます。

発表資料


発表では、nari_exさんがMBAで学ばれた網羅的な理論と、その理論を業務でどう実践しているかについて紹介されました。過去の経験ではなく、VPoEとして施策を進め直面している実態を盛り込んだ現在進行形のトークでした。組織マネジメントの話題はたくさん目にしますが、技術組織のHRM理論と実践内容をここまで丁寧にリンクさせて体系化した内容を他に知りません。
以下アジェンダに沿ってお話は進みます。

  • 1. 組織マネジメントの全体観をつかむ
    • 特にMBAで学び獲得された理論をベースにマネジメントの全体像を紹介
  • 2. エンジニアリング組織での実践例
    • 1. で紹介した理論を踏まえ、nari_exさんが所属する技術組織での実践例を紹介
  • 3. 組織マネジメントでの実践に向けて
    • 1. と2. の総括。マネジメントの難しさについてnari_exさんの経験と考えを紹介

拝聴しながら殴り書いたメモを自学のために後述します。nari_exさんの主旨と異なる内容があるかもしれません。あらかじめご容赦ください。

手元メモ

  • 聴講者イメージ
    • マネージャになって困っている方、困ったことがある方
    • マネージャとしてマネジメントをどう進めたらよいかわからない方
    • 組織の全体観をつかんでマネジメントの基礎を固めたいと考えている方
1. 組織マネジメントの全体観について
  • 前提として、組織マネジメントとは企業の目的・目標・ビジョンに向けて活動するものである。つまり組織マネジメントには経営戦略が密接に関わることを忘れてはいけない
  • そのうえでマネジメントには2つのアプローチがある
    • 1つめ:仕組みによるアプローチ。一般的には人的資源管理と呼ばれるもの
    • 2つめ : 対人的なアプローチ。リーダーシップとかモチベーションなどひとそのものに関わるもの
  • これらに働きかけることで組織構成者である従業員個々のふるまいに寄与 → 組織目的の達成に繋げる
仕組みによるアプローチの紹介
  • HRM(人材マネジメント)のフレームワークを整備
    • HR戦略策定
      • 組織規模による求める人物像の策定など
    • HRMシステムの整備
      • 戦略に従い、採用~退職までの制度設計、運用方針策定
    • 組織構造の整備
      • 指示命令系統や各レイヤごとの役割定義など

仕組みによるアプローチは、従業員が迷うことなく働きやすい業務環境をつくるうえで言語化しておくことが必要。組織規模により随時アップデートする。

対人的なアプローチの紹介
  • logical
  • emotional
    • 心理学、進化論、脳科学...
      • ひとを語る上で上記分類がなされることが多いが異論もある。この発表で詳細は述べない
  • スペンサーの氷山モデルは、対人アプローチを考えるうえで nari_exさんの役に立った
    • スキル知識(見えているもの)
    • 自己概念・特性・動機(隠れているもの)
      • スキル知識のように「見えているもの」に焦点を当てがちだが、隠れている「自己概念・特性・動機」にもしっかりと意識をすることが重要
      • スペンサーの理論を知ったことで、nari_exさんはメンバとお話する際の意識が変わった
  • ボヤティズ「コンピテンシー概念図」でも同じことが言える
  • レヴィン「組織変革プロセス」理論に従い、繰り返しメンバに働きかけて変化を促していく
    • 解凍(現場のメンバに説明し、理解してもらうフェーズ)→変革(変化するために施策を実行していく)→再凍結(変化に必要な施策を定着していく)

仕組みと対人、両輪をうまく回していくことが組織開発には必要。

2. エンジニアリング組織での実践例:ハートビーツさんについて
  • 社員数 80人程度、うち7~8割がエンジニア
    • 高い技術力と親身な対応が社のバリュー
    • インフラエンジニアの採用難易度が高いため、未経験者の育成も組織的におこなう
  • マネジメントの方針
    • モチベーション管理、技術力の維持向上拡大
    • 技術に対して誠実、真面目、真摯な企業文化の形成
    • 未経験者でも一人前になれるような研修制度をデザイン
実践例 :仕組み
  • エンジニアの人物像(CTOの馬場さんによる)
  • マネージャが見る人数を制限/スパン・オブ・コール
    • 7人までとしている
  • 組織構造
    • CTOだけじゃなく、エンジニアリング組織の責任者としてVPoEを新たに設置 > nari_exさん
      • 80人くらいで頭打ちしたため、組織構造を変えた
      • サイロ化を防ぐために営業と技術者を同事業部の配下に配置。VPoEは事業側も見ている
  • 採用
    • 採用難易度をさげる取り組みを実施。選考ステップを限りなく簡略化
    • リファラル・スカウト重視へ
    • 配属先のマネージャがメインで参加。面接、異動の責任を持つ
  • 評価制度
    • 評価と給与の連動ロジックを明文化し透明性を担保した。メンバにがんばる先を見せる
    • 数年ごとに人事評価シートを刷新
    • 業務内容によって評価軸も都度刷新している
      • nari_exさんがVPoEとして担当
  • 育成
    • 研修カリキュラムの新設、導入
    • パスゴール理論、シチュエーショナルなリーダーシップに基づく思想を重視
    • 研修では面談を実施。学んだことを実行できるかの確認のため口頭試問を導入
      • 主担当研修の最終カリキュラムでは、ホワイトボードで4つ程度の状況説明 (障害対応)をやってもらう。1発でクリアするメンバはなかなかいない
実践例: 対人
  • 思考を直す?行動を直す?スペンサーの氷山の話はよく考える
  • 不調時の対応
    • 気持ちが上がらなくて業務ができない。メンタルヘルス系の知識も必要なのでマネージャは知識を身につける
  • ストレスチェック
    • 半年に一度やっている
  • ラインケア
    • 1on1, メンタリング(ラインじゃない利害関係がないひとが担当をする。話しやすい環境づくり)
  • CTOが半年に一度技術戦略を話す場を設ける
    • クラウドとかサーバレスの潮流が来ている。我々も技術のキャッチや準備をちゃんとするように、等の話をしている
  • CTOとVPoEの明確化
    • ビジネスと技術の調整・綱引きをお互いに連携する
    • お互いの強みを活かす役割分担を意識
3. 組織マネジメントの実践に向けて:マネジメントの難点
  • 知識を実践する難しさを実感
    • 人間が人間に対する働きかけはプログラミングと異なる。再現性が乏しい、ステートフル
  • 常に意識している2点  ①現状をちゃんと知ること ②あるべき姿を変えることは難しいと認識すること
    • ほんとに今の環境を知ることはだいじ。じゃないと失敗する。他社がやっているから〜で判断しないほうがいいと考える
    • 自組織が目指すことは何なのか?自組織に必要なことは何か?導入できることできないことの見極めもすごく大事。マネジメントの難しいポイントだ
  • さらに難しいこと
    • カッツ理論でコンセプチュアルスキルと呼ばれるヒューマンスキル・人間性の部分
    • 自分を含めてひとはなかなか変えられない、変われない。マネージャである我々自身がどうブラッシュアップしていけるのか
    • nari_exさんは、柔軟さと素直さを大切に考えている。日々精進
          • 殴り書きメモここまで

感想

贅を尽くした内容に圧倒されました。技術組織の組織開発に関して、経営戦略や組織理論+なりみちさんのご経験をがっちゃんこし、それをさらに濃縮して体系化した貴重なお話を聴かせていただきました。
終盤で伝えられたコメントが印象に残っています。

  • 現状を正しく把握することはすごく難しい。正しく把握していない状態で間違った実践をすると取り返しがつかないことになる。いまの状態を正しくわかることは大切
  • いろいろ話をしてきたが毎日ひいひい言っています。ぜんぜんうまくいかない。反省ばかり
  • カッツ理論で示すコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルは重要だと感じています。自分がよりよく変わること、まだまだ人間性を磨かないといけない。日々精進です

これほどの努力家でもまだ足りないのんか〜。スライド p.60 「マネジメントスキル沼にようこそ」の一文が重みを増します。そして上記3つは、組織開発に限定されないことにも気づかされます。

組織開発において「仕組み」「対人」どのアプローチを取る場合も、なりみちさんはプロセスを重視されていることが言葉の端々からわかりました。
理論や知識はあくまでもツールで、持ち札として活用するスタンスです。いまの組織状態を把握することに重きを置き、状態次第で適切な持ち札を選定したり組み合わせを検討する。最適なツールが見つからない時は、持ち札を足し引きアレンジして、自組織にフィットする施策を創出する。
サービスやシステム開発においても通ずるように思います。
施策を実行する際には、想定できるポジネガあらゆる可能性に対応できるよう準備し、社のビジョンに沿うものか検討を重ね、試行錯誤しながら慎重に丁寧に実践を積み重ねておられるのでした。

そうして、組織の「関係の質」がよくなり、気づきが生まれて「思考の質」が変わり、メンバの「行動の質」が変化して「結果の質」が高まり、企業の成果に繋がる。
この因果関係は、ダニエル・キムの「組織の成功循環モデル」としてよく話題にされますが、指揮官としてまさにそのプロセスを実践されています。

発表中、少し前に読んだ入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる (光文社新書)を思い出しました。本書では組織における諸問題は以下の4つに分類されると記載があります。

  1. 戦略的な問題
  2. 技術構造的な問題
  3. 人材マネジメントの問題
  4. ヒューマンプロセスの問題

講演内容は 2. 3. 4. を包含しており、組織問題の大部分で参照できると感じています。

むすび

長くなりました。
なりみちさんの技術者・組織開発者の歩みをお伺いして、ずっとなにかがぐるぐると脳裏を過ぎっていました。どこかで読んだ一節となりみちさんのお考えやふるまいが繋がる気がして、それがなにであるか、愛読本UNIXという考え方―その設計思想と哲学 最終章フレーズに見つけられたので書き留めます。いかがでしょうか > なりみちさん

UNIXの考え方とは、常に将来を見据えながらオペレーティングシステムとソフトウェアの開発にアプローチすることだ。
そこでは、常に変化し続ける正解が想定されている。

将来は予測できない。現在についてあらゆることを知っていても、その知識はまだまだ不完全なことは認めざるをえない。
ソフトウェアを開発するにせよ、子どもたちのためにより良い世界を築くにせよ、将来はガラス越しにしか見えない。
いつか、すべての答えがわかる日がくるかもしれないが、それまでは前進し続けれなければならない。いつか、すべての答えを知る時がやってくるのかもしれないが、それまでは、一日ごとに「今日」が「昨日」担っていく日々を過ごしながら、将来に適応し、前進し続けなければならない。

UNIXの理念は、そういう将来に向かうアプローチの一つだ。
その本質は柔軟でありつづけることだ。
嵐が何度やってきても、風に揺れる木は折れることがない。

自分みたいなぐうたら初学者に対しても丁寧な助言をくださり感謝しています。貴重なお話を聴かせていただいてありがとうございました。

私は何年か前まで自分の在り方を決められずにいました。劣等感ばかり立派で情報弱者を気に病み、身近にロールモデルがほしいと思っていました。後ろを追いかけていれば不安が軽くなる気がしたからです。
今回「エンジニアリング組織の基礎知識」を拝聴し、なりみちさんの歩みを聞いて、当時の自分を恥ずかしく思います。今でもロールモデルはいません。でも機会と経験と感情から学ぶことを知りました。
スライドp.56 の一文が自分に力をくれます。

「こうやればよい」という決まりきったかたちはない

10/9 (水) 関西空港 > Helsinki > Madrid

1日目は移動して終了。ヘルシンキ経由でマドリードに入る旅程である。
空路だけで15時間近くを要してさっきやっとこマドリードのホテルに着きました。スペインは遠いよーー。

Helsinki

ヘルシンキ空港間近の上空からそこらじゅうの木々が黄に色づいているのが見えて、遠い場所に来たのだなぁと実感する。京都より1.5~2か月ほど季節がはやい。そういえばヘルシンキ空港のパネルで表示された気温に7℃とあり、どおりで寒いはずだ。

ヘルシンキで待ち時間が2時間ほどあったので、空港内のコーヒーショップでカプチーノを飲みながら行き交うひとを見て過ごした。半袖のひと、毛糸の帽子に冬の装いをするひと、みんなそれぞれここから別の地に降りていくのだなぁ。そんなことを思いながらうとうとねむくなる。

Madrid

ヘルシンキから4時間半あまりの空の旅は、隣席になったフィンランド人の女性とのおしゃべりタイムだった。フィンランドのouluに住み、今日はマドリードへ出張のために乗ったそうだ。お互いに英語が母語じゃないのがよかったように思う。お互いの行き先や住んでいる場所についてゆっくりのんびり話をし、時に How can I say... とか I don't know what I say, please wait a minutes sorry...と二人して考え込んだりしながらフィンランドと日本の情報交換をした。フィンランドでは、今冬の初雪が先週あったのよとご自宅の雪景色写真を見せてもらった。スペインの美食が楽しみなのだと伝えたら、バルセロナはシーフードがおいしいとおすすめしてもらった。
マドリード行きの便はFinnairとAlitaria航空の共同運行便で、国際線 Finnairの乗客と随分雰囲気が違うように感じた。シートベルトサインが消えると、わらわら席を立ち上がってそこかしこでおしゃべりがスタートする。なんとなくみんなにこにこしていて、CAの対応もとてもカジュアルで、ラテンの陽気を垣間見た気がした。
20:00pmごろにマドリードの上空で見た夕空のグラデーションの美しさに感動。まもなくしてマドリード空港着。フィンランド人の女性と手を振って別れた。こういう出会いがあるのはいいですね。

今の時間は10/9(水) 23:50。長い1日だった。
明日はマドリードの街周辺の散策とプラド美術館に行く予定。ねむい。細切れな睡眠のせいか頭がふらふらしています。

2019年 折り返し

職場が変わって3ヵ月近く経ち、2019年は半分が過ぎました。

新しい環境

自分が勤務する大阪オフィスはフリーアドレスで固定席がありません。そのため、出社して業務スペースを確保することから1日がスタートします。窓に近い静かな隅の席に空きが見つかればラッキーな日。
現職では組織を横断して働く立ち位置で、前職と異なり所属チームがないため、出社して誰とも話さず仕事をするのは寂しく感じました。今はだいぶん慣れて、自分のペースで仕事ができ始めています。
仕事に煮詰まると気分転換に高層ビルからの景色を眺めます。ほかには、オフィスの未開拓エリアを散歩したり(名の通り未開拓でがらんどうのスペースがある)エレベーターに乗ってコーヒーを買いに出てみたり、その時の気分でふらふらと歩き回っています。
ランチを取る時間や場所の決まりはなく、働き方オフィス環境どちらもこうでないといけないという決め事はなるだけ排除されています。

また、自由な働き方が制度として認められています。社がこだわる働き方を知った時、社員に対する期待と信頼そしてクリエイティビティに対する強い意思がないと設計できない思想だと思えました。
たとえば、定められた業務時間を前提に、出社退勤時刻は自由に調整が可能。有給休暇は入社当日から担保されていて、別に夏季や記念日休暇を確保。業務に支障がなければリモート勤務OK。副業やパラレルキャリアが認められているなど、個の自律と余白が重視されています。

近況

そのような組織で私は新設のポジションに就くことになりました。各部門やグループチームのMgr陣と組織開発に関わる役割で、名刺に「技術本部」とある以外は、具体的な肩書き所属、職種はありません。次の仕事はこれねと指示があるわけでもなく、どう働きどうパフォーマンスを発揮するかは自分で決めます。これまでにない自由な働き方は、しばらくのあいだ自分を少し不安にしました。

入社して数週間が過ぎたころに社長とランチをご一緒する機会がありました。最近どうですか?と問われ、組織に線が足りないように見えること、そして線を引くことが自分の役割な気がしていますと伝えたことを覚えています。社長はそうかぁと少し考えて、そのあとに「あなたの目標(期待値)の最上位に、組織基盤の設計者になりたいと書いておいてくださいね」と話がありました。それがやりたくて私は働く場所を変えたのでした。

月に何度か東京オフィスに出向き、複数名のMgrにオーラルヒストリーを実施し、組織の歴史と現状を知って今後の施策に繋げる準備や提案をしています。まだまだ貢献できているとは言えませんが、社や同僚みなさんの優しさや気遣いと自分のポジションに対する理解に感謝しています。
7月から人事戦略チームに参加させてもらっています。勉強していかなければ。

組織基盤の設計者。なにをすれば設計者として必要な力が身につくのでしょう?日々学んだり考えたり教わっているのは、知識や技術ではなくて、勇気をもって自分で自分の道を進めることかもしれません。

2019年7月〜 計画

脳内でぼやぼやと考えていることを2つ。
1. についてはこのあと職場や知人、識者に詳細をヒアリングさせてもらう予定でいます。
1. 体系学習

2. Antoni Gaudi
先日 ガウディの伝言 (光文社新書)を読んで影響を受けました。
もともとシステムぽいものや多種多様な思想や材料を組み合わせて構築したものに関心があり、上の著書を読んでガウディが設計した建造物に強く興味を抱きました。ガウディは曲線と複雑怪奇なデザインを多用する建築家として知られますが、その思想や彫刻家との関わりは"自然"にあり、シンプルを重視したものであったようです。こんな言葉を遺しています。

創造的であろうとして意味の無いものを付け加えてはいけない。
自然の原理をよく観察しそれをよりよくしようと努力するだけでいい。

ガウディは一体どんなアーキテクトだったのでしょう。実物を見にスペインに出向きたいなと考えています。秋かな。

自分のこと

目にするコンテンツや情報が変化したように思います。1対多の情報が流れるタイムラインを眺める時間が減ってこれまで以上に世情や流行に疎いです。そのぶん1対1/少数で接したりお喋りしたいと思うことが増えました。
ちょっと前にこのブログで書いた過去数年間のエントリや 2019年 を読み返しました。過去の自分が自分じゃないように感じたり、過去の言葉から気づかせてもらうことがありました。友人がくれた「一つのステップを挑戦して、考えて、感じて、楽しんでください」いい言葉だなぁ。

最近は、私が決めていまこうしている実感がもてている気がします。自分がどう感じるかも自分が決めればよい。できることなら他者がどうとかじゃなく自分なりに考えて歩いていきたい。時に感情のコントロールがむずかしくても、自分の感情だって自分で決められるのだと思えると清々しい気持ちになります。
髪型を以前のおかっぱボブに戻したら自分を取り戻した気分になったのも最近のことです。

今まで通りふらっと散歩に出かけたり素朴でおいしいものを食べたり、夜のカフェタイムをして自分の時間を過ごしたい。
なるべく好きなもの美しいものを見て、よい風を感じていたいなー。

夜のカフェタイム

気が緩んだのか新しい環境に慣れたせいかすこし気持ちが疲れてしまって、ホームシックのような感情が押し寄せていた。5月から新しい働きかたや役割や人間関係、通勤時間、職場環境、起床時刻の前倒しなど、新しい情報を入手したり近辺の変化が重なったせいだろうか。

気のおけないひとと会って話がしたい、おしゃべりしながらゆっくり静かな時間を過ごしたい。日に何度もそんな考えがこみ上げる。だけれども、明るく楽しい話題や具体的な報告事項があるわけではないのだ。よくわからんけど喋りたいという時、私たちはどうやってお誘いすればいいんだろう?

理由もなく誘われても困るよねとか、自分のわがままで他者の時間を搾取したくないとか、ぐるぐる迷ってはしゅんとするを繰り返して、前に読んだエッセイに「ちょっとこみいった内容は会って話すのがいちばん」と書かれていたのを思い出した。自分にとってこれは夜のカフェタイムだなぁ。夜のカフェタイムがしたい。
「いろいろ話がしたい、ちょっとどこかでお茶していきませんか?」と言って、いまこんなことをしているのとか、いま何につまづいているのとか、これを読んでこう思ったとか、この紅茶とケーキはおいしいとか、そういう身の回りや価値観や他愛のない話がしたかった。

遠くて知らない誰かの、人目を引く強い感情や言葉や情報は疲れてしまう。影響を受けたり流されてしまうのはいやだなぁと思う。
それらに当てはまらない、もっと身近な、ほんのりした考えとか思いとかほのぼのした繋がりとかぼや〜とした時間を過ごしたい。こんなぐんにゃり情けない感じが自分の素である。
隠者のようにどんより思い耽っていた時、タイミングよく気のおけないやさしい人たちがうえーいと自分の閉じたドアをノックしてくれた。

しゃべったり話を聞いたりするうちに、自然と気分が凪いだり自分の在り方を考えるきっかけをもらえて救われた。もし次に同じようなことがあれば、断られてもいいからちょっとお茶しませんか?とお誘いしたい。誘ってほしい。

自分が歩みを進めていくには、夜のカフェタイムと気のおけない存在が必要。身近だけどなににも代えがたい贅沢な時間を大切にしていく。

WSA研究会 #4 で縁側トークをしました

このエントリは、4/13(土)に京都で開催された第4回 WSA研究会 に参加した記録です。

縁側トーク経営学と組織デザインを通して考えたいこと」

speakerdeck.com

いただいた質問とコメント

  • 今回の発表内容について主な対象となるのは、企業の技術・研究組織あるいはアカデミックの組織?どちらをイメージしているか?
    • どちらにも当てはめて考えたいが、主対象としているのは企業の技術・研究組織です
  • 発表内で「技術進歩のスピードが速い」という話があった。技術や研究現場にいて、技術進歩のスピードが速いというのはどういうことなのかな?とよく考えることがある。速ければどうなのか、どうしていかないといけないのか。その点について考えはあるか?
    • 自分の勉強不足で曖昧かつわかりづらい表現になってしまった。技術進歩のスピードが速いというのは、開発者が新しい技術を日進月歩でどんどんと生み出されている状態をイメージしている。技術を使う側はどんどんと生み出される新技術をキャッチし、自分らの組織にフィットするかを見極めないといけない。組織ごとに、自分たちにとって本当に必要な技術とは何か?何を求めないといけないのか?の審美眼というか新しい技術を見極める目を肥やしていく必要があると思う。そういった点で自分は未熟であり、もっと学び考えていく必要がある
  • 新しい技術が生み出されるということは、レガシーな技術も生まれるということ。その点について考えはあるか
    • 組織が新たな技術を採用する時に、賞味期限というか短期的に使うのか、それとも長期的に使うのかを決めて置く必要はあるかもしれない。技術を採用する時点で、メンテナンスをどうするかを決めておくなど。他にも議論が必要なのだと思うが、未熟ゆえこれ以上のお答えができない
  • 発表の中で「頼りにしあう」という話があった。頼りにしあう同士になると、ひとの評価のしづらさがあるんだろうなぁとイメージする。頼りにしあう組織として、ひとをどう評価していくのかという視点は考えていく必要があるかもしれない
    • たしかに、そう思います
      • OKRの考えを重視して評価すれば、信頼感やチームワークを損ねることなく評価ができるかも?
  • 経営学の起源が間違えている。1980年代ではなく、1920年ごろ米国でフレデリック・テイラーにより「科学的管理法」として発祥している。またアポロ計画は1980年以前でありその観点でも矛盾がある
    • 勉強不足で発表内容に誤りがありました

全体の感想

WSA研に参加させてもらって いいな〜有意義だな!と感じることの一つに、参加者の方々がみなとても楽しそうに発表されることが挙げられます。
参加者全員が発表し、参加者全員が全発表にフルコミットするスタイルが、お客さんを作らない全員参加型の文化を強化しているように感じます。コメントや質問だけではなく、時には発表者に提案が寄せられるのもすごくいいなあと思います。どの議論を聞いても、参加者はそれぞれの技術領域や関心分野に持ち帰ることができる。各々が知識創造できる実践共同体の文化が自然に醸成されているようです。
私は発表内容や議論のすべてを理解することはできませんが、それでも聞いたことがある単語や情報を脳内から引っ張り出し、繋いで、それぞれの登壇内容を頭の中で絵にしていました。理解の及ばない内容であっても、知らない世界やいくつもの知的研究の渦に浸れる機会は大変貴重です。
前回と同様に、参加者皆さんの発表を拝聴しながら「この方がこの先に見たい世界とはなんだろうか」と心の中で問うていました。
慣れた毎日とは別の1日を過ごすことができました。

印象に残った発表

どの発表も興味深く、また未来が感じられるお話ばかりでした。
中でも itkqさんの発表 第4回 WSA 研究会に参加した「カオスエンジニアリングはどこから来たのか、その先には何があるのか」は大変興味深く拝聴しました。
これまでにもカオスエンジニアリングというワードは目にしたりNetflixの資料を読んだりしていましたが、発表を通してその背景や考え方について詳しく学ぶことができました。 "半脆弱性" という新しい概念や自然界における生命のサイクルをヒントに、ウェブシステムのあり方を考えていけるのではないか? という問いに大変わくわくしました。このような問いから新たな何かが生まれるのですね。説明がクリアで示唆に富み、itkqさんの思考の深さを伺い知れる発表でした。

思考段階の技術展望や構想について発表することができること、そして参加者それぞれの関心や知見を持ち寄り議論できることが、WSA研にあって他にはない大きな魅力に感じます。

個人的な振り返り

予稿と発表資料を作る過程で、自分は組織基盤の設計者になりたいのだなぁという発見がありました。このことは今後の自分にとって大きな一歩だと思っています。
一方で、予稿も当日の発表内容も不完全で稚拙な出来に終わりました。精一杯取り組んだものの勉強不足、力不足に尽きます。

#4準備中は苦心に苦心を重ねました。過去や現在の報告ではなく、未来を自分の言葉にしてまとめることは想像以上に大変で苦労しました。自分の中の朧げな展望を言葉にして作っていくことの難しさを知りました。

「研究計画書」をイメージして予稿に手をつけましたが、研究経験がない自分には全てが未知でした。研究計画 書き方 初心者 で何回検索したかわかりません。「研究」を意識しすぎたかな?

当然のことですが難しいのは書き方ではなく、自分がやりたいことの目標目的や展望を明確に他者に伝えることの方だとわかってきます。フォーマットが理解できても他者に伝わる研究計画を書くことは不可能です。自分はまだ組織に関する考えやデザインについて、他者に論理的に説明できるだけの力と知識・情報を持ち合わせていないことを痛感しました。未熟でした。

自身の研究課題設定をして年単位の研究計画を立て、未来にコミットしながら試行錯誤し探求を続けられている研究者の方々のすごさを思い知りました。

予稿および当日の発表は不甲斐ない内容でしたが、それでもお付き合いただいた参加者皆さまには心から感謝しています。
この振り返り内容を、未来の自分が懐かしく笑って読むことができるよう私なりに努力したい。

キーワード

謝辞

重ねて、運営メンバおよび参加者の皆さまには、分野外で専門領域を持たない自分に時間を割いていただいたことに心から感謝します。
自身の現状を知る機会をいただけたことは大きな収穫です。

この3月にMBAを修了されたnari_exさんには、組織に対する考えやMBAでの学びについて具体的な助言や情報をいくつもいただき刺激を受けました。自分が進もうとする道の近くを既に歩まれた方にお話が聞けると意欲が増します。
そして発表中の助言や越境し挑戦したことを評価してくださったゆううきさん、自分の発表にコメントや質問をいただいた皆さまにも感謝しています。たくさんの力と気づきをいただきました。

まさよしさんには随分助けていただきました。大感謝です。
多忙の最中にも関わらず壁打ち相手をしてくださってありがとうございます。自分のとっちらかった脳内を整理し、別の言葉に言い換えて助言してもらったりで、相当骨が折れたと思います。おかげでようやっと予稿を書き発表することができました。

自分の中にある課題イメージを具体化し、どう解決するのか。道筋を分解して考えることが次の課題です。

さいごに

5月から新たな環境で組織づくりの一端を担わせてもらうことになります。
このあとは自分の関心領域で歩みを進め、いつかまたWSA研の皆さまによい報告ができるように精進します。
がんばろ〜。

WSA研#4 縁側トーク : 変化に強い組織づくりを容易にする組織デザイン

WSA研の趣旨「Webを中心とした様々な技術要素および要素のつながりを含む系全体」と自分の関心分野「ひとが集団を成す組織基盤」は、すこし遠いですが近接領域にあると考えて、#4に参加希望をさせていただきました。

まえがき

ここに記載する内容は、自分の経営学修士(以下、MBAと記載) あるいはデザインスクール (D-school) 挑戦に対する意思表明となります。
皆さまからフィードバックを受けてブラッシュアップし、受験時に必要となる研究計画書に落とし込みたいと考えています。WSA #4 で言葉にして発表させてもらうことで、ぐうたらな自分でもこの挑戦に向けてがんばれると思いました。
WSA研の開催趣旨から逸れてしまうこと、研究に纏わるお作法が未学習であることをご容赦ください。

もくじ

  • 組織の定義
  • 研究目的
  • 研究対象
  • 研究テーマ
  • 研究項目案
  • 今後の課題
  • 学ぶ理由

組織の定義

本エントリで扱う組織の定義は、Puranam, Alexy & Reitzigらが提唱した「志向適性、保有情報、関心、知識などが異なる個人や集団同士の調整的な活動のシステム」を採用する。(1)
組織は複数の部門から成り、認識可能な境界線を持ち、システムレベルの目的や目標に対して各々の部門の貢献が期待される。境界線があることと部門それぞれが目標を持っていることで、組織全体をユニークたらしめているという考えかたである。

このような組織に対して、組織デザインによって解決するべき課題は大きく分けると二つ。いかに「分業するか」「目標に対する実行/成果の統合をするか」となる。それぞれが扱う内容について後述する。

  • 分業
    • 分割と分配
    • 組織全体の目標を達成するためにタスクを分割し、各々の部門および個に割り当てることを意味する
    • 組織デザインにおけるタスク配分は、分割されたタスクを、組織内の個や集団に配分することを意味する
    • タスクの性質および難易度から配分先の役割を決定する。役割に適した人材および集団をアサイン(採用)するというようなプロセスを含む
    • 組織経営において必要となるビジョンや目標策定もここに含む
  • 目標に対する実行/成果の統合
    • 報酬(金銭的・非金銭的)と情報を提供する
    • 組織内における協働と活動の調整を促す(組織へのコミットメントとモチベーション)
    • 協働するには、組織内の個々が協力して働くようなエンゲージメントを生み出す必要がある(モチベーション)
      • 具体的には、他者の協力を促進する内発的動機付けもしくは外発的動機付け(非金銭的・金銭的報酬)がある
    • 調整を行うために、組織内の個々がもつ情報を別の個々に共有する(コミュニケーションデザイン
    • 目標や目的に対する達成度を評価する(アウトプット評価)

上述の通り、組織とは人々が集まって協働するシステムである。つまり、組織内で個々や集団が活動し、活動内容が組織全体のアウトプットとなる。そこではどのようにタスクを分割し配分して、個と組織が活動していくのだろうか?たんにタスクを分割し配分しただけでは個も組織もばらばらになってしまうだろう。

組織には特定の設計者が必要となる。設計者は、そこでどのような分業の体系を構築するのか、どのようなリワード(報酬)システムを組むのか、どれぐらいの権限の階層へと垂直的に分化させるのか、そこにどういう運用ルールを埋め込むのかを考える。組織全体の目標達成のために、個や集団の活動をどのように統合し、組織をどう組み合わせてアウトプットできるかのアウトラインを描く。
組織デザインを考えるときには、集団と個の両軸で検討していく。

研究目的(爆発中)

  • 技術の世界にユニークで新たな価値を創出するための組織経営地図をつくる (TBD)
    • 組織デザインの考察を進め、組織経営に関わるBoardメンバに役立つクエストマップをつくりたい(妄想)
    • どのクエストを巡るかは、経営戦略、ビジョンそして組織が共有する物語によって異なるのだろう(妄想)
      • 組織の歩き方(デザインパターン)を示した地図を作りたいSRE本みたいな。ゴールまで遠くても、歩き方があれば迷ったり悩んでも現状把握や道しるべを見つけられて安心できる(妄想)
    • 自分が地図をイメージするとき、天体地図、世界地図、天気図、SRE本、Skyrim 全ロケーションMap を思い浮かべる。これらは私たちが歩みを進めている世界の未来予測、方向付け、現状理解、振り返り、クエストの把握など、複数の目的に応えてくれる標だ。組織基盤や組織開発に関わるひとにとって、自分の研究内容が、地図のごとく活用可能になればうれしい(希望)

イメージ図

Site Reliability Engineering: How Google Runs Production Systems (English Edition)

Site Reliability Engineering: How Google Runs Production Systems (English Edition)

研究テーマ

  • 変化に強い組織づくりを容易にする組織デザイン ~ 自律的な個と物語を添えて 

技術進歩のスピードが速く顧客のニーズが変化しやすいといった不確実性が高い事業環境競争にある組織で、いかに「価値の創出」「市場の先読み」「外的環境への追従」「差別化」「働きがい」といった競争戦略を、組織デザインの観点で解決できるかを明らかにする。

研究対象

  • 技術をベースとした事業経営を行う研究あるいは技術組織全体
  • 組織の基盤づくりに携わるひと(Board、VPoE、CHRO等) と、チームメンバ
  • Profit and Loss Statement (P/L)
    • Balance Seat (B/S)

今後自分が深く関わり、現場に近い場所で現場の空気を吸って研究や実験を試みたい。そして組織を成すひとびとが、どんな息づかいで、どんな考えでその組織で生活しているのかについても焦点をあてる。

研究項目案

  • 経営管理とマネジメント・イノベーション
    • 組織目標を実現するために、経営管理の施策、プロセス、構造、技法、創造と実施すること
    • 1. モチベーション、2. 発明、3. 導入、4. 理論化とネーミング (5)
      • 企業の経営方針と一致しており、企業が直面している問題を解決することを論理的に説明する方法を考え、社内から支持が得られるよう、新しい経営管理の方法の魅力的なネーミングを考え、伝達する
      • 経営管理の正当性を担保する条件:実用的正当性(従業員にとってメリットがある)、道徳的正当性(組織の方針や価値観と一致している)、認知的正当性(導入効果が論理的に納得できる)
  • 競争戦略と競争の型の見極め
  • ビジネスモデルのフロー
    • 価値の創造
    • 社内外でどのような相手とどう取引をするかの選択
    • それらをどう構造するのか
    • ガバナンスの主体
    • 取引先との全体デザイン
優れたビジネスモデルの要件:
 1. 効率性 (Efficiency)
    取引上のコストを抑えられたビジネスモデルデザイン
 2. 補完性 (Complementarity)
 複数の取引主体を結びつけて、単体では得られなかった効果が得られる(業務提携など)
 3. 囲い込み (Lock-in)
 顧客を同業競合他社に流出しづらいようなネットワーク効果Appleが得意とするような
 4. 新奇性 (Novelty)
 イノベーティブなビジネスモデルデザイン。過去に結びついていなかった取引主同士を繋いだり。クラウドファインディングやAirbnbなど

ビジネスの潮流が速い昨今は、イノベーティブでシンプルなビジネスモデルが強いといえよう (6)

  • 経営思想 ~ 両利きの経営ができているか
  • 組織構造
    • アーキテクチュアルな知がもたらされる組織構造となっているか
    • ドミナントデザインに甘んじて、新奇性がもたらされなくなっていないか
  • 情報
    • who knows what の考え
    • 組織におけるドランザクティブ メモリーを高めるチームデザインと情報共通ツールの提案
  • パフォーマンス評価(アウトプット)
    • スキルレベル /知識や技術レベル
    • 経験レベル /判断力、予測力
    • モチベーションレベル /主体性、チームワークや目標へのコミットメント

組織行動の研究では、3つの領域「個人行動」「集団行動」「組織行動」に分別される。

研究では、はじめに組織経営に該当する「組織行動」に焦点をあて、組織のビジョンや構造、文化が企業の業績に対してどのように影響するかについて明らかにする。
次に個の行動や態度に目を向けて、組織の中で働く個人の行動や態度が、どのようにやりがいや生産性に影響するかを示すつもりだ。具体的には、経験学習による認知レベルとモチベーションレベルを測る。ここで示すモチベーションとは、業務に対して主体的かつポジティブな影響力を及ぼせることを意味する。
両者を明らかにしたうえで、ビジョンと目標に沿って両者の組み合わせをおこなっていく予定だ。

今後の課題

以下に関しては言語化できていないため、継続して考えていく必要がある。

  • 研究方法
  • 研究成果
  • 研究項目(案)
    • もう少し焦点を絞って具体化しないといけない
  • 研究室訪問
    • MBA or D-school どちらが自分にマッチするかの見極め

学ぶ理由

私は職場で組織やひとに長く関わり、それらに関心が強いことを自覚している。しかし特定組織の知識経験をもとにした現場運用とマネジメントそして事案対応が主であり、広義の組織経営や組織構造の体系的な理解には至れていない。そのため、経営事業戦略に適した組織構造や体制を提案することができない。加えて組織構造上の不具合を先読みする力が不足しており、事案が発生した際は事象そのものにフォーカスしてしまって高次に本質的な判断や課題解決ができないことをずっと不甲斐なく感じていた。

このような反省から、組織経営に必要な要素について本質的な理解を深めたいという思いが強くなった。事業戦略に見合う組織構造をデザインする力を強化したい。経験から学ぶだけではなく、経営に必要な知識と技術を体系的に学び、現場で通用する実践力をより高い視座で身に付けたい。
MBA あるいは D-schoolでは、経営に必要となる要素と幅広い知識と技術に触れ、自分が所属する組織にフィードバックできることを目指す。具体的には、人的資源管理、財務会計、情報・マーケティング、組織行動を学び、組織と個の両方に実りがある判断と課題解決ができれば幸いである。

経営に関わるあるいは組織に所属する複数の人たちと話を重ねる度に、経営とは組織とは「ひと」だなぁと確信する。
自分が組織づくりの一端を担うことで、ひとが組織の中でよく生きるための助けになれたらと考えている。

参考

片足を既知、もう片足を未知において

4月26日が現職の最終出社日であった。
夕刻に設定したいくつかのMTG以外は、後片付けとご挨拶で1日が過ぎた。
4月以降は週2~3日の出社だったから現職を離れる心の準備はできていた。そのはずなのに、最終日はもう二度と中の人としてここに居ることはないのだなぁと寂寥感が増した。

現職では実に数多くの経験と感情を味わせてもらった。
選考時のことはよく覚えている。当時読んで感銘を受けた「フェルマーの最終定理」の感想を延々とお話した。登場する数学者たちそしてフェルマーの最終定理を解いたアンドリュー =ワイルズ の生き方がどれほど自分の琴線に触れたかを語り、気がつくと選考開始から1時間が過ぎていた。それでもjkondoさんは、それでそれで?と身を乗り出して私の話に耳を傾けてくれたのだった。自分がどういったことをしてきてどんな考えの持ち主で、最後に「新しい価値を生み出す人を応援したいのです」そう伝えた。

入社後は混乱と怒涛の毎日が待っていた。
人事部が立ち上がり、ただしアサインされた自分は未経験で、人事なのに人事職とは何なのかを知らずにいた。これはまずいぞと、人事に関する書籍を購入して自主学習するのだが、書籍に書かれている内容と当時の実務はずいぶんかけ離れていた。今となれば笑い話だ。
技術やインターネットに疎い自分にとって、まわりの社員が何を話しているのかわからないことが頻繁にあった。聞いたことのない単語が飛び交う。指示された内容がまともに理解できない自分が情けなかった。テキストチャットで、意味のわからない言葉を何度も聞き返してはピントのずれた仕事をして失敗し、それでも根気強く自分に関わってくださった同僚には心から感謝しています。

技術が好きで、人びとがよく生きるための新たな価値をつくりだす場にいたいという気持ちが軸にある。
技術が好きだったから、技術者の視点を知りたいと考えて、エンジニアの同僚にRubyを教わり文法を覚えた。やり始めると楽しくて、動くものは作れなくとも開発者の思想や視点をほんの少しずつ理解できるようになったと思う。のちにVimを覚え、この自分がLinuxコマンドをたたけるまでになった。デザイナーさんとは会話を通してサービス開発やデザインの思想哲学について何度もレクチャーを受けた。インターネットビジネスがわからない教えて!と、当時の営業部長に教えを請うた。すべてが体当たりだ。
いつだったかインターネット文化やコンテキストに馴染めない自分が悔しいと吐露したことがある。そういうひとが人事だからよいのだと言ってくれた同僚の言葉は今でも忘れられない。

現場業務は長いこと1人であったが、同僚の協力を得て少しずつチームとして仕事ができるようになった。インターンシップやイベントをきっかけに現職を知り、入社に至った同僚がいま大活躍されている。これ以上の喜びはない。
自分の業務進行は相変わらず不恰好で体当たりで、経営陣を始め同僚には随分と迷惑をおかけしました。ぜんぜんスマートじゃないし回り道ばかり。上司と部下1人ずつだった部が、メンバが増え、チームとなり、今までなんとかやってこられたのは、優秀な同僚とメンバの助けがあったからだ。
これほどやさしくてよいひとが集う組織はそうない。同僚が楽しく元気に働ける組織づくりに関われることが私の喜びだった。
現職のミッションはこうである。

「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする

自分は、Webサービスだけじゃなく、はてな社内でリアルな体験を通してこのミッションの恩恵を被った。自分の人生にとって大変有意義で豊かで楽しい時間をたくさん過ごさせていただいた。知るとは、つながるとは、表現するとはいったいどういうことなのか、毎日様々なシーンで考えた。アウトプットを大切にする文化を通して、アウトプットとは社会や他者に対するメッセージなのだと教わった。

少しずつ技術基盤や組織基盤に関心が強くなり、自分が現職で関わることの意味をよく考えるようになった。さらに組織基盤にコミットしたい、知らないといけないことがたくさんある、さらに視座を高めなければならない、という思いが今回の決断のきっかけです。


最終日の夕刻にメッセージボードをいただいた。個別にいただいたメッセージもうれしかった。ありがとうございます。
心のこもったメッセージたちに、今までの記憶がどっと押し寄せて泣いてしまった。
「ともみーの笑顔」や「安心感」というワードがいくつか目についた。そうかみんなに笑顔を向けることができていたのだな〜。現職にポジティブな価値をもたらすことができたのだろうかとずっと不安でいたので tomomii=笑顔と捉えてもらえたことがうれしい。
大変だな孤独だなぁと感じることがあっても、いつも必ず誰かに助けられて毎日楽しく働かせてもらえた。本当に幸せでした。

次の組織でも大きなチャレンジが待っているだろう。はてなの皆さんに恥ずかしくないよう自分の持ち場で笑顔で楽しく働きたい。
片足を既知、もう片足を未知の世界において、両足のバランスをうまく取りながら先に続く長い道を歩いていく。

はてなのファンであることに変わりはありません。これからもどうぞよろしくお願いいたします。