WSA研#4 縁側トーク : 変化に強い組織づくりを容易にする組織デザイン
WSA研の趣旨「Webを中心とした様々な技術要素および要素のつながりを含む系全体」と自分の関心分野「ひとが集団を成す組織基盤」は、すこし遠いですが近接領域にあると考えて、#4に参加希望をさせていただきました。
まえがき
ここに記載する内容は、自分の経営学修士(以下、MBAと記載) あるいはデザインスクール (D-school) 挑戦に対する意思表明となります。
皆さまからフィードバックを受けてブラッシュアップし、受験時に必要となる研究計画書に落とし込みたいと考えています。WSA #4 で言葉にして発表させてもらうことで、ぐうたらな自分でもこの挑戦に向けてがんばれると思いました。
WSA研の開催趣旨から逸れてしまうこと、研究に纏わるお作法が未学習であることをご容赦ください。
もくじ
- 組織の定義
- 研究目的
- 研究対象
- 研究テーマ
- 研究項目案
- 今後の課題
- 学ぶ理由
組織の定義
本エントリで扱う組織の定義は、Puranam, Alexy & Reitzigらが提唱した「志向適性、保有情報、関心、知識などが異なる個人や集団同士の調整的な活動のシステム」を採用する。(1)
組織は複数の部門から成り、認識可能な境界線を持ち、システムレベルの目的や目標に対して各々の部門の貢献が期待される。境界線があることと部門それぞれが目標を持っていることで、組織全体をユニークたらしめているという考えかたである。
このような組織に対して、組織デザインによって解決するべき課題は大きく分けると二つ。いかに「分業するか」「目標に対する実行/成果の統合をするか」となる。それぞれが扱う内容について後述する。
- 分業
- 分割と分配
- 組織全体の目標を達成するためにタスクを分割し、各々の部門および個に割り当てることを意味する
- 組織デザインにおけるタスク配分は、分割されたタスクを、組織内の個や集団に配分することを意味する
- タスクの性質および難易度から配分先の役割を決定する。役割に適した人材および集団をアサイン(採用)するというようなプロセスを含む
- 組織経営において必要となるビジョンや目標策定もここに含む
- 目標に対する実行/成果の統合
- 報酬(金銭的・非金銭的)と情報を提供する
- 組織内における協働と活動の調整を促す(組織へのコミットメントとモチベーション)
- 協働するには、組織内の個々が協力して働くようなエンゲージメントを生み出す必要がある(モチベーション)
- 具体的には、他者の協力を促進する内発的動機付けもしくは外発的動機付け(非金銭的・金銭的報酬)がある
- 調整を行うために、組織内の個々がもつ情報を別の個々に共有する(コミュニケーションデザイン)
- 目標や目的に対する達成度を評価する(アウトプット評価)
上述の通り、組織とは人々が集まって協働するシステムである。つまり、組織内で個々や集団が活動し、活動内容が組織全体のアウトプットとなる。そこではどのようにタスクを分割し配分して、個と組織が活動していくのだろうか?たんにタスクを分割し配分しただけでは個も組織もばらばらになってしまうだろう。
組織には特定の設計者が必要となる。設計者は、そこでどのような分業の体系を構築するのか、どのようなリワード(報酬)システムを組むのか、どれぐらいの権限の階層へと垂直的に分化させるのか、そこにどういう運用ルールを埋め込むのかを考える。組織全体の目標達成のために、個や集団の活動をどのように統合し、組織をどう組み合わせてアウトプットできるかのアウトラインを描く。
組織デザインを考えるときには、集団と個の両軸で検討していく。
研究目的(爆発中)
- 技術の世界にユニークで新たな価値を創出するための組織経営地図をつくる (TBD)
- 組織デザインの考察を進め、組織経営に関わるBoardメンバに役立つクエストマップをつくりたい(妄想)
- どのクエストを巡るかは、経営戦略、ビジョンそして組織が共有する物語によって異なるのだろう(妄想)
- 組織の歩き方(デザインパターン)を示した地図を作りたいSRE本みたいな。ゴールまで遠くても、歩き方があれば迷ったり悩んでも現状把握や道しるべを見つけられて安心できる(妄想)
- 自分が地図をイメージするとき、天体地図、世界地図、天気図、SRE本、Skyrim 全ロケーションMap を思い浮かべる。これらは私たちが歩みを進めている世界の未来予測、方向付け、現状理解、振り返り、クエストの把握など、複数の目的に応えてくれる標だ。組織基盤や組織開発に関わるひとにとって、自分の研究内容が、地図のごとく活用可能になればうれしい(希望)
Site Reliability Engineering: How Google Runs Production Systems (English Edition)
- 作者: Niall Richard Murphy,Betsy Beyer,Chris Jones,Jennifer Petoff
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研究テーマ
- 変化に強い組織づくりを容易にする組織デザイン ~ 自律的な個と物語を添えて
技術進歩のスピードが速く顧客のニーズが変化しやすいといった不確実性が高い事業環境競争にある組織で、いかに「価値の創出」「市場の先読み」「外的環境への追従」「差別化」「働きがい」といった競争戦略を、組織デザインの観点で解決できるかを明らかにする。
研究対象
- 技術をベースとした事業経営を行う研究あるいは技術組織全体
- 組織の基盤づくりに携わるひと(Board、VPoE、CHRO等) と、チームメンバ
- Profit and Loss Statement (P/L)
- Balance Seat (B/S)
今後自分が深く関わり、現場に近い場所で現場の空気を吸って研究や実験を試みたい。そして組織を成すひとびとが、どんな息づかいで、どんな考えでその組織で生活しているのかについても焦点をあてる。
研究項目案
- 経営管理とマネジメント・イノベーション
- 競争戦略と競争の型の見極め
- ビジネスモデルのフロー
- 価値の創造
- 社内外でどのような相手とどう取引をするかの選択
- それらをどう構造するのか
- ガバナンスの主体
- 取引先との全体デザイン
優れたビジネスモデルの要件: 1. 効率性 (Efficiency) 取引上のコストを抑えられたビジネスモデルデザイン 2. 補完性 (Complementarity) 複数の取引主体を結びつけて、単体では得られなかった効果が得られる(業務提携など) 3. 囲い込み (Lock-in) 顧客を同業競合他社に流出しづらいようなネットワーク効果。Appleが得意とするような 4. 新奇性 (Novelty) イノベーティブなビジネスモデルデザイン。過去に結びついていなかった取引主同士を繋いだり。クラウドファインディングやAirbnbなど ビジネスの潮流が速い昨今は、イノベーティブでシンプルなビジネスモデルが強いといえよう (6)
- 経営思想 ~ 両利きの経営ができているか
- 探索 ☆
- これがないとイノベーションの創出は難しい
- 深化
- 探索 ☆
- 組織構造
- アーキテクチュアルな知がもたらされる組織構造となっているか
- ドミナントデザインに甘んじて、新奇性がもたらされなくなっていないか
- 情報
- who knows what の考え
- 組織におけるドランザクティブ メモリーを高めるチームデザインと情報共通ツールの提案
- パフォーマンス評価(アウトプット)
- スキルレベル /知識や技術レベル
- 経験レベル /判断力、予測力
- モチベーションレベル /主体性、チームワークや目標へのコミットメント
組織行動の研究では、3つの領域「個人行動」「集団行動」「組織行動」に分別される。
研究では、はじめに組織経営に該当する「組織行動」に焦点をあて、組織のビジョンや構造、文化が企業の業績に対してどのように影響するかについて明らかにする。
次に個の行動や態度に目を向けて、組織の中で働く個人の行動や態度が、どのようにやりがいや生産性に影響するかを示すつもりだ。具体的には、経験学習による認知レベルとモチベーションレベルを測る。ここで示すモチベーションとは、業務に対して主体的かつポジティブな影響力を及ぼせることを意味する。
両者を明らかにしたうえで、ビジョンと目標に沿って両者の組み合わせをおこなっていく予定だ。
今後の課題
以下に関しては言語化できていないため、継続して考えていく必要がある。
- 研究方法
- 研究成果
- 研究項目(案)
- もう少し焦点を絞って具体化しないといけない
- 研究室訪問
- MBA or D-school どちらが自分にマッチするかの見極め
学ぶ理由
私は職場で組織やひとに長く関わり、それらに関心が強いことを自覚している。しかし特定組織の知識経験をもとにした現場運用とマネジメントそして事案対応が主であり、広義の組織経営や組織構造の体系的な理解には至れていない。そのため、経営事業戦略に適した組織構造や体制を提案することができない。加えて組織構造上の不具合を先読みする力が不足しており、事案が発生した際は事象そのものにフォーカスしてしまって高次に本質的な判断や課題解決ができないことをずっと不甲斐なく感じていた。
このような反省から、組織経営に必要な要素について本質的な理解を深めたいという思いが強くなった。事業戦略に見合う組織構造をデザインする力を強化したい。経験から学ぶだけではなく、経営に必要な知識と技術を体系的に学び、現場で通用する実践力をより高い視座で身に付けたい。
MBA あるいは D-schoolでは、経営に必要となる要素と幅広い知識と技術に触れ、自分が所属する組織にフィードバックできることを目指す。具体的には、人的資源管理、財務会計、情報・マーケティング、組織行動を学び、組織と個の両方に実りがある判断と課題解決ができれば幸いである。
経営に関わるあるいは組織に所属する複数の人たちと話を重ねる度に、経営とは組織とは「ひと」だなぁと確信する。
自分が組織づくりの一端を担うことで、ひとが組織の中でよく生きるための助けになれたらと考えている。
参考
- (1) Puranam, P., Alexy, O., & Reitzig, M. (2014). What's “new” about new forms of organizing?. Academy of Management Review, 39(2), 162-180.
- (2) マネジャーの最も大切な仕事――95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力
- (3) Amazon CAPTCHA
- (4) Getting to yes in the real world: William Ury at TEDxMidwest - YouTube
- (5) (6) Amazon CAPTCHA
- (7) Birkinshaw, J., Hamel, G., & Mol, M. J. (2008). Management innovation. Academy of Management Review, 33(4), 825-845.